「ブレーカ」は電気設備の安全を守る重要な保護装置です。「MCCBとMCBは何が違うの?」「どう選べばいい?」この記事ではブレーカの種類・動作原理・選定方法まで、図解を使ってわかりやすく解説します。
ブレーカとは?
ブレーカ(遮断器)とは、過電流・短絡(ショート)・漏電などの異常時に自動的に回路を遮断して電気設備と人体を保護する装置です。「回路遮断器」とも呼ばれます。ヒューズと異なり、トリップ(動作)しても交換不要でリセットして再使用できます。
工場の制御盤・配電盤・家庭の分電盤に必ず設置されており、電気設備の安全を守る最も基本的な保護装置です。ブレーカは「どんな異常を保護するか」「遮断容量はいくらか」によって種類を使い分けます。
ブレーカの主な種類
ブレーカの動作原理
MCCBやMCBの過電流保護には主に2つの動作方式が使われます。
ブレーカの選定ポイント
| 選定項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 定格電流(In) | 保護する回路・機器の定格電流以上で、かつ電線の許容電流以下を選ぶ |
| 定格遮断容量(Icu/Ics) | 短絡事故時に流れる可能性のある最大電流(系統短絡電流)を遮断できる容量 |
| 極数 | 単相2線:2P、単相3線・三相3線:3P、三相4線:4P |
| 漏電保護の要否 | 水気のある場所・屋外・人が触れる可能性がある回路にはELCBを使用 |
| フレームサイズ | 外形サイズ。定格電流が大きいほどフレームも大きくなる |
ブレーカの種類(MCCB・ELCB・NFB・ELB)の詳細
ブレーカ(遮断器)にはいくつかの種類があります。MCCB(配線用遮断器)は過電流・短絡から配線を保護する最も基本的な遮断器で、NFB(No-fuse Breaker)とも呼ばれます。ELCB(漏電遮断器)はMCCBに漏電検知機能を追加したもので、ELB・地絡遮断器とも呼ばれます。感度電流は6mA・15mA・30mA(一般的)・100mA(モータ回路等)などがあります。MCCB+ELCB(漏電リレー)を組み合わせた回路構成もあります。制御盤の主幹には大容量MCCBを設置し、各分岐回路には分岐MCCB・ELCBを設けてセレクティブ保護(選択遮断)を実現します。
ブレーカの選定(遮断容量と負荷特性)
ブレーカの選定で最も重要なのは「遮断容量(kA)」と「定格電流(A)」です。遮断容量は系統の短絡電流(kA)以上の値を選ぶ必要があります。系統の短絡電流は電力会社との受電設備・変圧器容量から計算します。不足すると短絡事故時にブレーカが破損して重大事故になります。モータ回路では始動電流(定格電流の5〜8倍)でトリップしないよう「瞬時トリップ電流」の設定に注意が必要です。インバータ・直流電源装置(SMPS)等の機器は起動時の突入電流が大きいため、ブレーカ選定には特性曲線(I-t特性)を確認します。
ブレーカと電気法規(電気設備技術基準・内線規程)
日本における電気設備の設計・施工はJIS・電気設備技術基準・内線規程・JEAG(電気技術規程)などの法規・規格に従う必要があります。ブレーカの選定・設置についても、電線の許容電流に対応したブレーカ容量の選定・漏電遮断器の義務設置箇所(湿気の多い場所・水気のある場所・対地電圧150V超えの場合等)などが規定されています。電気工事士資格(第二種は600V以下の一般用電気工作物・第一種は最大電力500kW未満の自家用電気工作物)がブレーカを含む配線工事には必要です。電気主任技術者は自家用電気工作物の保安監督を担います。
ブレーカトラブルと保守管理
ブレーカのトラブルには「誤トリップ(正常な負荷でトリップ)」と「トリップ不動作(異常時にトリップしない)」の2種類があります。誤トリップの原因は過負荷(定格電流の超過)・短絡・漏電・始動電流によるもの・ブレーカの劣化・周囲温度の影響です。トリップ不動作はブレーカの劣化・トリップ機構の故障が原因で、定期的な動作確認テストが必要です。ブレーカは一般的に使用開始から10〜15年を目安に更新推奨とされています。制御盤の年次点検では絶縁抵抗測定・ブレーカの動作テスト(テストボタン)・締め付けトルク確認が必須です。
漏電遮断器(ELCB)の動作原理と感度電流
漏電遮断器(ELCB・漏電ブレーカ)の動作原理を理解しましょう。電源線の各相に流れる電流の和(往路と復路の電流)は正常時はゼロです(キルヒホッフの法則)。漏電があると地絡電流が流れ、往復の電流に差が生じます。この電流差を零相変流器(ZCT)で検出し、設定した感度電流(動作電流)以上になったとき遮断機構を動作させます。一般の住宅・事業所では感度電流30mA・動作時間0.1秒以内(高速型)が標準です。人体への感電保護では感度電流30mA以下が必要で、プールや浴室等の特殊場所では15mA以下が推奨されます。電流容量の大きい設備では100mA・200mA等の高感度電流設定の製品が使われます。
ELCBのトリップ原因と対策
現場でELCBがトリップする場合の原因と対策を知っておきましょう。①漏電による正常トリップ:絶縁抵抗計(メガー)で各機器・配線の絶縁抵抗を測定して漏電箇所を特定します。②静電容量による誤トリップ:長い配線・インバータ出力・高周波機器が浮遊容量を持ち、漏電がなくてもELCBがトリップすることがあります。対策はインバータ専用のELCB(インバータ対応漏電遮断器)を使用するか、高感度の感度電流設定を避けます。③落雷サージによるトリップ:サージ保護デバイス(SPD)の設置で対策します。④EMC(電磁両立性)問題:インバータ・スイッチング電源からのノイズによるトリップはEMCフィルタの追加で対策します。
低圧電路の保護協調(選択遮断)
複数のブレーカが直列に接続された電路では「保護協調(選択遮断)」の設計が重要です。事故点に最も近いブレーカだけがトリップし、上位のブレーカはトリップしない(正常部分への影響を最小化する)設計を「セレクティブ保護」と言います。選択遮断を実現するには下位ブレーカの遮断時間特性が上位より速い(または小さい電流でトリップする)ことが必要です。ブレーカのI-t(電流-時間)特性グラフを重ねて確認します。また大容量のMCCBに小容量MCCBを組み合わせる場合、小MCCBの短絡遮断容量が足りない場合があり、電流制限形ブレーカ(CLF)の使用や上位ブレーカによる保護補完が必要です。
スマート分電盤・クラウド監視
IoT・スマート化の流れで制御盤・分電盤もデジタル化が進んでいます。スマートブレーカ(三菱電機iH・パナソニックBR・河村電器等)は電流・電圧・電力をリアルタイム計測してクラウドに送信できます。工場のエネルギー管理(FEMS:Factory Energy Management System)に活用することで電力ピークカット・省エネ分析・設備別電力コスト把握が可能になります。異常電流の早期検知・予知保全にもスマートブレーカのデータが活用されており、突発停止による損失を低減できます。省エネ法(特定事業者)の電気使用量計測・エネルギー管理にもIoT対応計測器の導入が進んでいます。
よくある質問
ブレーカがトリップした原因の調べ方は?
MCCBがトリップした場合、ハンドルが中間位置(トリップ位置)になります。まず負荷機器の電源を切り、短絡(ショート)や過負荷の原因を取り除いてからリセット(ハンドルをOFF位置まで倒してからON)します。ELCBの場合はテストボタンで動作確認できます。頻繁にトリップする場合は、回路の負荷電流の確認・絶縁測定(メガー)による漏電箇所の特定が必要です。
ブレーカとヒューズの違いは?
ヒューズは過電流で内部の可溶素子が溶断(一度きり)して回路を遮断します。ブレーカはトリップ後もリセットして再使用できます。ヒューズはシンプルで安価ですが、動作後は交換が必要です。ブレーカは高価ですが、繰り返し使用可能で動作時間特性を任意に設定できます。現代の制御盤ではブレーカが主流ですが、半導体保護など特殊用途にはヒューズが選ばれることもあります。
まとめ
ブレーカは過電流・短絡・漏電から電気設備を保護する安全装置です。MCCB・ELCB・MCB・ACBの特徴と使い分けを理解し、保護する回路の定格電流・遮断容量・極数・漏電保護の要否を正しく選定することが重要です。


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