電磁開閉器とは?電磁接触器との違い・サーマルリレーの役割を解説

機電

「電磁開閉器」と「電磁接触器」は似た名前でよく混同されます。この記事では電磁開閉器の構成・電磁接触器との違い・内蔵されるサーマルリレーの役割まで、わかりやすく解説します。

電磁開閉器とは?

電磁開閉器(Magnetic Switch、MS、または電磁スイッチ)とは、電磁接触器(MC)とサーマルリレー(熱動形過負荷継電器)を組み合わせた装置です。英語では「Motor Starter(モータスタータ)」とも呼ばれ、モータの起動・停止制御と過負荷保護を一体で行います。

電磁接触器だけではモータに過大な電流が流れても自動では遮断できません。電磁開閉器はサーマルリレーを組み合わせることで、過負荷時に自動的に回路を遮断してモータを保護します。制御盤でモータを制御する場合、ブレーカ→電磁開閉器→モータという構成が基本です。

電磁接触器と電磁開閉器の違い

電磁接触器(MC)
・起動・停止(ON/OFF)の制御のみ
・過負荷保護機能なし
・モータ保護はサーマルリレーを別に設置
・単体で使う場合は別途保護装置が必要
電磁開閉器(MS)
・起動・停止(ON/OFF)の制御
・サーマルリレーによる過負荷保護機能あり
・コンパクトに収まる
・モータ保護に必要な機能が一体化

サーマルリレー(熱動形過負荷継電器)とは

サーマルリレーは、電流の発熱を利用してモータの過負荷を検出する保護装置です。バイメタル(熱膨張率の異なる2枚の金属を張り合わせたもの)に電流を流すと熱が発生し、バイメタルが曲がって接点を開放します。モータの過負荷運転(過大な電流が継続して流れる状態)を検出して回路を遮断し、モータの焼損を防ぎます。

サーマルリレーの動作フロー
過負荷発生
定格電流を超える電流が流れ続ける
バイメタル発熱・湾曲
電流の熱でバイメタルが曲がる
トリップ動作
b接点が開いてMCコイル回路を遮断
モータ停止・保護
冷却後にリセットして復帰

電流整定値の設定方法

サーマルリレーには「電流整定ダイヤル」があり、保護するモータの定格電流値に合わせて設定します。設定する電流値はモータの銘板に記載された「定格電流(FLA)」に合わせます。整定値が高すぎるとモータが過負荷でも保護されず、低すぎると正常運転中にトリップしてしまいます。一般的にモータ定格電流の100〜120%を目安に整定します。

電磁開閉器の選定(電流レンジとトリップ電流設定)

電磁開閉器(マグネットスイッチ・サーマルリレー組み合わせ品)の選定では、使用するモータの定格電流値に合わせた電流レンジの製品を選びます。熱動継電器(サーマルリレー)のトリップ電流設定値はモータ定格電流の105〜110%程度に設定するのが一般的です。インバータ駆動のモータには熱動継電器では過負荷保護が不十分なケースがあり、電子式モータプロテクター(EMR)またはインバータの内蔵保護機能を使う設計が増えています。サーマルリレーの温度補正も忘れずに行いましょう。周囲温度が高い環境では定格電流を低めに設定するか、周囲温度補正値を適用します。

電磁開閉器と安全回路(Safety Relay)の違い

電磁開閉器は通常の制御用途に使われますが、人の安全に関わる緊急停止回路・安全インターロック回路では「安全リレー・安全コントローラ」が必要です。IEC 62061・ISO 13849といった機能安全規格では、危険機械の制御システムにPLr(パフォーマンスレベル)またはSIL(安全度水準)が定められており、通常の電磁開閉器だけでは規格を満たせません。安全リレーユニット(PILZ・Sick・Omron・Schmersal等)は二重回路・強制ガイド接点・自己診断機能を持ち、機能安全規格PLd/SIL2以上を達成できます。製造現場のコンプライアンス上、機械安全の知識は制御設計エンジニアに必須です。

電磁開閉器の配線と盤内レイアウト

制御盤内の電磁開閉器の配線では「主回路」と「制御回路」の物理的分離が重要です。主回路(高電圧・大電流)と制御回路(低電圧・小電流)の配線を同じダクトに入れると、主回路からのノイズが制御回路に誘導してPLCの誤動作原因になります。盤内レイアウトは上から「遮断器・電源入力」→「電磁開閉器・主回路機器」→「端子台(主回路)」→「PLCユニット・制御機器」→「端子台(制御回路)」という垂直方向の配置が一般的です。配線の識別にはマーカー(KANEHA・HellermannTyton等)を使いJIS規格に従った電線色分けを行います。盤内のグランド(接地)設計も安全とノイズ対策の両面で重要です。

サーマルリレーの動作原理と選定

サーマルリレー(熱動継電器)はバイメタル(膨張率の異なる2種類の金属板を貼り合わせたもの)が過電流により発熱して湾曲することで接点を動作させる保護装置です。電流の時間積分(I²t)に応じてトリップするため、始動時の過電流(短時間)ではトリップせずに連続過負荷(長時間)でトリップする特性を持ちます。選定では①モータの定格電流に合った電流調整範囲の製品を選ぶ②周囲温度の影響(温度補正)を考慮する③単相断線保護機能の有無を確認する(三相モータの単相運転による焼損を防ぐ)④リセット方法(手動リセット・自動リセット・電気リセット)を用途に合わせて選ぶことが重要です。

電磁開閉器の省エネ化(インバータとの組み合わせ)

電磁開閉器はインバータとの組み合わせで省エネ効果を最大化できます。一般的な電磁開閉器はインバータ出力の高調波に対してアーク抑制が難しいため、インバータ用電磁接触器(高頻度開閉対応・パワー因数補正能力強化)を選定することが重要です。インバータを使ったポンプ・ファンの変速制御では、モータの回転数を必要最小限に抑えることで大幅な省エネを実現します。圧力・流量センサのフィードバック制御と組み合わせたPI制御(比例積分制御)でポンプを最適運転点で制御するシステムは、定速運転比で40〜60%の電力削減事例があります。

電磁開閉器の主回路接続と始動方式

電磁開閉器を使ったモータ制御には複数の始動方式があります。①全電圧直入始動(最も一般的):電源電圧をそのままモータに印加。始動電流は定格の5〜8倍と大きいが回路がシンプル。②スターデルタ始動(Y-Δ始動):始動時はスター接続で電流を1/3に抑え、一定回転数に達したらデルタ接続に切り替える。電磁開閉器3台(電源用・Y用・Δ用)とタイマを使います。③リアクトル始動・コンデンサ始動:始動電流を抑えるための減電圧始動。④インバータ始動(ソフトスタート):インバータで周波数・電圧を徐々に上げることで始動電流を抑えます。大型モータ・頻繁に始動する設備ではスターデルタ始動またはインバータ始動を採用することが多いです。

電気安全と電磁開閉器の設置基準

電磁開閉器の設置には電気設備技術基準・内線規程の要求事項があります。制御盤の設置場所は「漏電・感電・火災」のリスクを低減するために、適切な防水・防塵等級(IP等級)の盤を選定します。電磁開閉器は開閉頻度・周囲温度・設置方向(標準は垂直取付)を守る必要があります。水平取付や逆さ取付は別途動作確認や定格電流の低減が必要な製品があります。高電圧(600V超)の取り扱いは電気主任技術者または高圧電気工事の資格が必要です。盤内の充電部への接触防止措置(絶縁カバー・インターロック付き扉)は重大事故防止の必須要件です。

電磁開閉器の保護装置との組み合わせ(EMR・PCM)

電磁開閉器(電磁接触器+熱動継電器)の組み合わせに加え、より高機能な保護装置との組み合わせが増えています。電子式モータプロテクター(EMR・Electronic Motor Protection Relay)は電流値をデジタル計測し、過負荷保護・欠相保護・不平衡保護・逆相保護・低負荷警報等の多機能保護を提供します。IO-Link・ModbusでPLCと通信して保護状態・電流値を監視することも可能です。パワーコンディションモニタ(PCM)は電圧・電流・電力・力率をリアルタイム計測して省エネ管理に活用します。これらの高機能保護装置はモータの突発故障を減らし、計画外停止によるラインダウンを最小化します。

電磁開閉器の標準化と産業規格(IEC 60947-4-1)

電磁開閉器の国際規格はIEC 60947-4-1(低圧スイッチギヤとコントロールギヤ:電気機器の力率接触器とモータスタータ)で規定されています。この規格では定格動作電流・定格動作電圧・使用カテゴリ(AC-3・AC-4等)・耐久性(機械的・電気的寿命)・検証試験方法が定義されています。JIS規格では対応するJIS C 8201-4-1があります。CE(欧州整合規格)マーク取得のためにはIECまたはENの対応規格への適合が必要で、欧州輸出機器の制御盤設計では必須の確認事項です。UL(米国)向けにはNEMA(北米電気製品協会)規格への適合が求められ、NEMA Size(1〜9)による分類が使われます。

電磁開閉器とエネルギー管理(ISO 50001)

ISO 50001はエネルギーマネジメントシステムの国際規格で、工場・施設のエネルギー使用量の継続的改善を要求します。電磁開閉器を使ったモータ制御において、起動・停止の最適化・インバータ変速制御への更新・待機時の自動停止(エコ制御)などがISO 50001対応の省エネ手法として有効です。モータのエネルギー管理では「モータシステムの最適化(MEPS:最低エネルギー性能基準)」として高効率モータ(IEコード:IE3以上推奨・IE4以上は超プレミアム効率)への更新も重要です。EU・日本・中国等でIE3以上のモータ使用が義務化または推奨化されており、電磁開閉器とともにモータ本体の効率も選定の重要な基準になっています。

よくある質問

サーマルリレーがトリップした後の対処は?

まず過負荷の原因を特定することが最優先です。すぐにリセットして再起動しても同じ原因が残っていれば再トリップします。原因として、機械的な過負荷(詰まり・軸受け異常)、電源電圧の異常、整定値の誤設定、モータの劣化などが考えられます。原因を取り除いてから、バイメタルが十分に冷えた後(数分以上)リセットボタンを押して復帰させます。

電磁開閉器とブレーカはどう使い分ける?

ブレーカは短絡(ショート)保護が主な役割で、頻繁なON/OFFの操作には向いていません。電磁開閉器は頻繁な起動・停止操作が可能で、過負荷保護(サーマルリレー)も行います。通常は「ブレーカ(短絡保護)→電磁開閉器(運転制御・過負荷保護)→モータ」の順で接続します。

まとめ

電磁開閉器は電磁接触器とサーマルリレーを一体化した装置で、モータの起動・停止制御と過負荷保護を同時に行います。制御盤設計において最も基本的な機器のひとつです。サーマルリレーの電流整定を正しく設定することがモータ保護の基本です。

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